ステンレス鋼
耐食性や耐熱性が必要とされるねじには、主にステンレス鋼が使われています。
ステンレス鋼はクロムを12%以上含む合金鋼ですが、含有する主成分のちがいにより、オーステナイト系とフェライト系、及びマルテンサイト系に分けられます。
オーステナイト系ステンレス鋼
炭素0.15%以下、クロム16〜20%、ニッケル8%以上を含む鋼種です。焼入れによる硬化はしませんが、加工硬化性が著しいという性質を持ちます。
さらに1000〜1150℃に加熱急冷する溶体化処理を施すことで、耐食性および強靭性が向上します。
代表的な鋼種として、SUS304・SUSXM7・SUS316・SUS303などが挙げられます。基本的には非磁性ですが、加工度合いにより磁性を生じることがあります。
・最も代表的なステンレス鋼SUS304はクロム18%、ニッケル8%が主要成分で「18-8ステンレス」とも呼ばれます。耐食性、機械的性質が良好で、家庭用品から工業用品まで広く利用されています。
・SUS304に銅を添加し冷間加工をしやすくしたのがSUSXM7です。ねじのヘッダー加工にはSUS304よりもSUSXM7の方が適しているため、小ねじやボルトに良く使われています。
・SUS304にモリブデンを添加し、ニッケルを増量して耐食性を高めたのがSUS316です。ねじ類においては、SUS316の加工性を高めるために炭素の含有量を低くしたSUS316L(Lはローカーボン)の製品が広く流通しています。
フェライト系ステンレス
この鋼種は炭素0.12%以下、クロム16〜20%を含みます。
代表鋼種はSUS430・SUS434です。オーステナイト系よりも耐食性が劣り、熱処理をしても硬化しません。ステンレス鋼の中では価格が最も安く、加工性も良好です。
熱に強いため厨房まわりでよく利用されます。強い磁性があるのが特徴です。
マルテンサイト系ステンレス
炭素0.1〜0.40%、クロム12〜18%を含むステンレス鋼です。
代表鋼種はSUS410・SUS420・SUS416・SUS431です。こちらは耐食性には劣るものの、他のステンレス鋼とは異なり熱処理で強度を高めることが可能なため、ドリルねじやタッピンねじによく使用されています。
フェライト系と同様に強い磁性を持ちます。
オーステナイト-フェライト系(2相)ステンレス
オーステナイト相とフェライト相から成るステンレス鋼であり、オーステナイト系の弱点である耐応力腐食割れ性と、フェライト系の弱点であるじん性を補完した性能を持ちます。
優れた強度と耐食性があるため、幅広い用途での使用が可能です。とくに塩化物環境下での耐食性・すき間腐食性を有していることから、海水環境下での使用などが見込まれます。
ニッケル含有量が低いことから、ニッケル価格の影響を受けにくい金属となります。
こちらもフェライト系と同様に磁性を持ちます。
現在、流通しているボルト類の代表鋼種はSUS329J4Lです。